こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。

もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。

今回の内容も、相続が発生したご親族様から、かなりの頻度でいただく質問です。

被相続人の遺言書がみつかった場合に、その遺言書の内容に相続人が納得いかない場合があります。

また、せっかく遺言書が見つかったにもかかわらず、遺言書の内容そのものが、法律的にはあまり意味のない内容である為に、どのように扱えばいいのか分からないといったご相談もいただくことがあります。

もちろん、本来としては、相続財産を所有していた遺言者様(被相続人)の意思を尊重するのが一番です。

しかし、その反面で、今後その財産を相続し管理していくのは相続人です。

遺言は必ずしも相続人の利益に沿った内容とは限りませんので、遺言に反する遺産分割を行いたいと考える相続人の方もいらっしゃるかと思います。

そして、そのような場合であれば、遺言書通りに相続続きを進めるのではなく、相続人間で決めた内容で遺産分割をしていくことが可能なのかが問題となります。

ここでは、このように、遺言書が在る状況でも、遺産分割協議を実施することが可能なのかについて、お話を進めたいと思います。

目次【本記事の内容】

1.遺言の内容と異なる遺産分割は可能か?

結論としては可能です。

しかし、実際に遺産分割協議を実施しようとすると、遺言書そのものの内容との関係と、さらには、遺言書に遺言執行者が選任されている時との場合の兼ね合いがあるので、下記の観点に分けて、遺産分割協議が実施可能か検討する必要がございます。

1-1.遺言と異なる遺産分割の条件

遺言とは、被相続人が亡くなる前の最後の意思表示であり、原則的に相続人はこれに束縛されることになります。

けれども、相続人全員が遺言の内容に反対する場合は、これに束縛される必要はなくなり、相続人の間で協議を行い、相続人全員が納得のいく遺産分割を行うことができます。

-ポイント-

相続人の全員が遺言書の内容に反対している事。

1-2.遺言執行者の選任があるか?

さらに、遺言書で遺言執行者が選任されている場合の問題があります。

遺言執行者が選任された場合、この遺言者執行者は相続財産についての管理処分権を有するとともに、遺言内容を実現する義務が生じます(民法1012条1項)。

つまり、遺言執行者は遺言の内容が、しっかりと反映されるように行動する責任があるということです。

そして、相続人としても、この遺言執行者が遺言の内容を実現するために行動することを、妨げることはできません(民法1013条)。

このために、理論の上では、相続人全員の合意があったとしても、遺言書とことなる遺産分割はできないようにも思います。

しかしながら、実際問題としては、このような結論は誰もが望むべくものではありません。

理論上の整合性について、現在でも議論はあるものの、実務としては遺言執行者の了承を得た上で、遺言と異なる遺産分割をすることは許されると解する見解が有力です。

そして実際に、遺言執行者としても、わざわざ相続人の全員が反対しているような行動をとる可能性は極めて低いです。

-ポイント-

遺言執行者の了承を得た上で、さらに相続人全員が反対であれば遺言と異なる遺産分割は可能。

1-3.遺言内容が第三者の為のものである場合は?

しかし、これにはもう一つ、問題が派生してきます。

遺言執行者の了承を得た上で、遺言と異なる遺産分割を実施できるのは、遺言の内容が相続人(法定相続人)に相続させる内容だった場合に限られてきます。

もしも、遺言の内容が、相続人以外の第三者に遺贈をしていた場合は、その者の同意がない限り、相続人全員が遺産分割を行ってもそれは意味のないものとなります。

-ポイント-

もしも、遺言の内容が、法定相続人以外の第三者に遺贈されるものである場合は、その第三者の同意も必要。

2.受遺者(第三者)は遺贈を放棄できるのか?


遺贈は遺言者が独自で行うことができ、生前の贈与契約などとは異なり、受遺者側の事前同意は必要ではありません。。

しかし、それでは受遺者にとって不本意な結果も生じるので、受遺者は下記のような要件のもと、遺贈による相続財産の譲り受けを拒否するとができます。

2-1.包括遺贈の場合

包括遺贈と言って、法定相続人の方と同じような立場で、被相続人の財産すべてを第三者が遺贈を受ける場合があります。

このように、包括受遺者は、相続人と同一の権利を有することになりますので、遺贈の放棄についても、相続人の相続放棄と同じの方法により放棄することになります。(民法990条)。

ですから、包括遺贈を放棄するためには原則として、法定相続人と同じように、遺言者が亡くなったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に申立てを行うことになります。(民法915条)。

2-2.特定遺贈の場合

上記の包括遺贈と違って、特定の財産のみに関する遺贈の場合は、いつでも遺贈を放棄することが可能です。

放棄した場合には、遡って遺言者が亡くなった時から遺贈を受けなかったことになります(民法986条)。

もっとも、これでは他相続人等の財産関係がいつまでも安定しないことから、他の相続人等は相当の期間を定めて、遺贈の承認または放棄をするよう特定受遺者に催告することができます(民法987条)。

3.相続人の一部が遺言書内容に不満がある場合

上記までの内容は、あくまでも遺言が有効であることを前提とした話で説明をすすめました。

しかし、遺言が有効になるには、様々な法定要件が課せられているので、遺言そのものが無効である場合も多々あります。

したがって、相続人の一部が遺言書の内容に不満がある場合の対処方法としましては、遺言の有効性を争い、法定相続に則った遺産分割を行う選択もあります。

また、遺言書の内容に関わらず、兄弟姉妹以外の相続人には遺留分の限度で最低限の相続権が確保されています。

そのため、遺言の内容において、ご自身の遺留分の確保されないという状態であれば、その限度で、ご自身の遺留分請求をすることが可能になってきます。

しかし、このように、遺言の無効や遺留分の主張を行う場合は、遺言の内容に納得している、他の相続人の方々とも感情が衝突して、収拾がつかなくなる事例が多くあります。

そのために、遺言の無効や遺留分の主張を行う場合は、努めて冷静な対応が求められることとなります。

4.まとめ

近年は終活関連の情報が溢れてきており、生前に遺言書を残されている方も増えてきました。

そのため、遺言書が発見された場合の相続手続きご相談も、増えてきています。

当事務所では、今回の記事のような、『遺言の内容と異なる遺産分割協議はできますか?』というような相談を受けることが可能です。

結論としてはケースバイケースな相談になってきますので、まずは一度当事務所へご相談に来ていただき詳しくお話を聞かせていただきたいと思います。

今回の参照条文まとめ

民法915条 相続の承認又は放棄をすべき期間

民法986条 遺贈の放棄

民法987条 受遺者に対する遺贈の承認又は放棄の催告

民法990条 包括受遺者の権利義務

民法1012条1項 遺言執行者の権利義務

民法1013条 遺言の執行の妨害行為の禁止

引用元:民法条文

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相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。

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