こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。
もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。
前回まで相続放棄についてお話していました。
被相続人に借金があった場合や、疎遠であった知らない被相続人の家族と関わりたくない場合などに、相続放棄をすることによって相続財産を相続しないことが出来るという基本的なお話でした。
そして、一度相続人が相続放棄をしてしまえば原則相続人は被相続人の有する一切の権利や義務を相続しないことになり、原則的に相続人は相続財産に関して何ら責任を負わなくなります。
そう、あくまで“原則的”にという事です…。
では、何が問題なのか?というと、相続財産に不動産がある場合の話です。
もし、相続人全員が相続放棄をしたとして、相続財産を相続する者が誰も居なくなった場合、当該不動産はどうなってしまうのでしょうか?
この点、誰が管理していくのか?という問題が残ります。
目次【本記事の内容】
- 1.相続放棄で所有者不在の不動産はどうなる?
- 1-1.相続人不存在の相続財産はどうなる?
- 1-2.とくに不動産の存在が問題になる理由
- 2.相続財産管理人を選任するには?
- 3.相続財産管理人を選任しても、国は簡単には不動産を引き取らない。
- 3-1.永遠に終わらない、相続財産管理人業務
1.相続放棄で所有者不在の不動産はどうなる?
まず、簡単に相続の流れを説明すると、配偶者や子供などの最初の相続人全員が相続放棄をすると、相続権は、親や兄弟姉妹などの次の相続順位者に移ることになります。
更に、その次順位者も相続放棄をし、法定相続人の全員が存在しなくなった場合に相続人不存在となります。
1-1.相続人不存在の相続財産はどうなる?
そして、ここからが問題です。
まず、相続人不存在となった場合の相続財産は、法人化されます。そしてここで、相続財産管理人の選任がなされます(民法第951条、第952条)。
ザックリいうと、ここで選任された相続財産管理人が相続財産の清算等を行い、残った相続財産を国庫に引き継ぐ手続きを行います。
民法が規定する相続人がいない場合の相続財産の流れを簡単に説明すると上記のようになり、最終的には相続不動産などは国が管理していくことになります。
条文知識だけに触れてみると、『要は国庫帰属するから、どうでもエエねん。』というかんじでしょうか…。
だが、しかしです!
実際問題、実務において、このように手続きが進むようなことは、ほとんど起こりえません。
まず、上記の相続財産管理人を選任ですが、家庭裁判所に選任の請求をしなければなりません。
この場合、誰が相続財産管理人の選任をもうしたてるのでしょうか?
借金が原因で相続放棄された場合であれば、被相続人の債権者などが請求してくれれば良さそうですが、そうでない場合はどうでしょう?
相続人の中の誰か自らが、選任請求をしなければ、相続財産管理人が選任されることはありません。
もちろん、『ワザワザ家庭裁判所に申し出てまで相続放棄したのに、まだやることあるの!?』となる気持ちも分かります。
相続財産については無関係になり、もう財産の管理に対しては、自分は何も関係がないようにも思えてきます。
しかし、民法は、相続放棄を認める規定があると同時に、下記ののような規定もあります。
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となったものが相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない
引用元:民法第940条
つまり、この規定により、相続放棄をしても相続人であった者は相続財産管理人が選任されるまでは、相続財産を管理し続けなくてはならなくなるのです。
1-2.とくに不動産の存在が問題になる理由
この規定の何が問題なのか?相続財産に不動産がある場合です
預金などは、放置しておいても、ほとんどの場合、銀行が管理していますし、大概の銀行も、相続放棄のあった預貯金の扱い方などは、周知しておりますので、ほとんど問題にはなりません。
しかし、不動産の場合はそんな単純な話ではなくなってきます。
例えばマンションです。
放置しておくと、管理組合との関係から、何らかの請求が押し寄せてくる可能性があります。
管理不備で放置しておいてた部屋から、水漏れや何らかの事故があった場合、損害賠償請求される可能性があります。
通常の戸建てであっても同様です。
空き家になった不動産が老朽化し、それが原因でどんな事故が起こるかわかりません。
特に、この空き家問題は深刻化しており、国でも自治体でも、本格的に、所有者問題として対策を取り始めているので、行政からの責任追及という意味では、もはや楽観視できない状況が、すぐそこまで来ています。
このように、不動産が関わってくると、相続放棄をしたからと言って安心できるワケではない状況になっています。
2.相続財産管理人を選任するには?
『だったら早く、相続人の誰かが相続財産管理人を選任したらいいやんか!』と言われることもあるのですが…、
実は、この時点で話がかなり進みにくい状態であることがほとんどです。
相続財産管理人を選任する為の費用の問題がるからです。
もちろん、こちらとしても『借金やら面倒ゴトを回避するために相続放棄したのに、なんで遺族が金払わなあかんねん!』とおっしゃる気持ちは重々承知です。
しかし、国から選任される相続財産管理人(ほとんどが弁護士)も、業務として財産管理をしますので、当然、経費や報酬が発生します。(相続財産管理人の選任をする際に、予納金として20万~100万円ほどの費用が発生します。)
一応、その報酬は放棄された相続財産から支払われることになるのですが、足りなければ申立人が支払うことになります。
そして、この時も、然して相続財産がほとんど不動産しか無いと状況も多いので、すぐに、相続放棄した不動産が売れるワケでもないので、ほとんどが申立人が支払わなければならない場合がほとんどです。
結局の話、もしも相続財産に不動産があった場合は…、
相続放棄を選択したのに、相続財産を管理しなければなりません。
しかし、管理したくないからと相続財産管理人を選任した場合でも報酬を支払うことになります。
3.相続財産管理人を選任しても、国は簡単には不動産を引き取らない。
問題は上記に説明した、管理責任の話だけではありません。
冒頭のほうで、相続財産管理人が財産の清算を終えると残った財産を国庫に引き継ぎ次ぐとは説明しましたが…、
ここでも実際問題、不動産の場合は、国はほとんど引き取りません。
その理由はシンプルで“清算すらできない無価値な不動産”など欲しくないからです。
まず、本来売れるような不動産であれば、債権者が財産管理人選任請求をし、相続不動産を清算してくれます。
また、そもそも売れる不動産であれば、被相続人の債務オーバーである場合を除いて、相続人の誰かが売却して話が完結する場合がほとんどです。
つまり、相続財産管理人の処理を経てまで残存するような不動産は売れないし、国も欲しがらない不動産であることがほとんどです。
3-1.永遠に終わらない、相続財産管理人業務
最悪、国庫帰属できない相続不動産に対する、相続財産管理人の業務はいつまでも終了しません。
そして、選任申し立てをした者は、予納金の超えた分の費用と報酬を、いつまでも相続財産管理人に払い続けなくてはならないことになってしまいます。
結局、こうなると、最初から普通に相続して、維持費を支払っていた方ほう良かったんじゃないか?という場合も出てきます。
もちろん単純に、相続財産に多額の負債がある場合であれば、相続放棄をして管理義務のみを負い続けるでもいいでしょう。
しかし、逆に負債がないのないのであれば、普通に相続してしまい、売却できない可能性があっても地道に不動産業者と協力しあって、売却先を探していくほうが良いのかもしれません。
或いは、何か資産税対策として、土地の有効活用を検討するといった方法もあります。
当然、きちんと相続登記を済ましてしまえば、その相続不動産については、個人の判断に基づく自由処分が可能ですので、相続放棄をする前に、しっかりと相続した場合との比較を検討いただいたほうがいいと言えます。
【※当然、一度、相続財産を承認して不動産登記を済ましてしまえば、その後に相続放棄はできなくなるので慎重な判断が必要です。】
まとめ
相続・遺言を解決する当事務所では、相続手続きや遺言書作成だけでなく、相続放棄についてお困りの、ご相談者様への対応もさせていただきます。
どこに相談していいのかわからないといった方はまず当事務所までご相談ください。親切丁寧に司法書士が対応いたします。
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なお、相続放棄以外にも、相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。