こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。
もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。
さて、これまで何度か遺言書に関する記事を紹介してきましたが、ここでは、そもそも論として何のために遺言書を残すのか?その効果の部分について説明を進めていきたいと思います。
遺言書を残す目的は何か?
被相続人(遺言作成者)の死後、財産処分の方法や、後の家族のあり方などを相続人に示し実現するために残すものです。
また、付言事項という家族への感謝の気持ちや、様々な想いを伝えるためにも作成することもあります。(※付言事項には法的な効果は発生しません。)
確かに遺言は必ず作成しなければならないものではありません。しかし、実務目線で考えてみると、遺言書があれば良かったのではないかと思う相続手続きが非常に多いです。
もちろん、相続というのは一生に一度きりの事態ですので、人によってはどんな場合に遺言を作成すべきか分からない部分が多いと思います。
今回は、どのような場合に遺言を作成した方がよいのかについても解説していきます。
目次【本記事の内容】
1.特定の相続人に相続させたいとき。
遺言作成のご依頼の中でも、『特定の相続人(第三者)に相続財産を与えたい。』と言う内容の話は非常に多いです。
特に、ご相談者様にとって、看護や介護、または経済的な支援をしてくれた相続人に対する感謝の意味を込めた相続手続きを希望される場合や、配偶者をはじめ、残された相続人当事者の生活資金の為に相続財産を与えたい場合などです。
例えこのような場合でも、遺言を作成していなと、相続財産は基本的に法定相続分通りに相続されてしまいますので、やはり遺言作成は必須となってきます。
しかし、この場合において注意しておきたいのは遺留分です。
仮に遺言で特定相続人に相続財産の全てを相続させる旨記載したとしても、それが他の相続人の遺留分を侵害している状態になると、遺留分侵害額請求の対象になってしまいます。
また、該当する法定相続人が、実際に侵害されている遺留分の請求をしてきた場合は、その分、遺言相続人は、請求人に対して金銭での返還をしなければならない必要が出てきます。
その為に、もし遺留分を侵害するような遺言を作成する場合であれば、先ずは遺留分の額に気を付け、あらかじめ相続人に遺言の内容や、その理由を話し合っておくほうが望ましいでしょう。
特に、相続人に対して、法定相続分以外の相続財産の内訳にする理由がわからないままだと、相続人に不信感を与えてしまう可能性が高いです。
遺言作成者の亡くなった後は、どうしても遺言書に書かれた内容のみでしか本人の意図は理解されないので、生前の話し合いは非常に大事になってきます。
2.遺言によって相続財産の分割方法の指定をする
上記の通り、遺言書が無い場合で、相続財産が複数ある場合、通常は全ての相続財産は法定相続分通りの内容に従い、均等に分割されます。
特に、相続財産が預金のみなら口座が複数あったとしても均等に分割できますが、不動産で法定相続による手続きをした場合、共有となるので、後々の手続きが煩雑になります。
また、そこから二次相続が発生した場合、更に共有者が増えるので、遠い親族同士の共有となった場合はトラブルの原因にもなります。
このように、法定相続人が複数いる場合、上記のようなことがないように、遺言で不動産を相続する人や、預金や現金を相続する人について、あらかじめ遺言で決めてしまうことを、“相続財産の分割方法”の指定と言います。
相続が発生する前から分割方法の指定をすることによって、相続開始後に相続人が遺産分割協議などする必要がなくなり、相続人同士が混乱せずに済む形になります。
ただその反面で、不動産や株式などは価値が変動します。
実際に売却してみないと価格が分からない財産が多い場合は、金銭だけの相続と違い、共同相続人の中で不公平な分割になってしまう事もデメリットとして存在します。
その為に、相続財産を構成する資産の内容の算定が、遺言書作成時に難しいものが多い場合は、逆に遺言作成がトラブルの原因となる可能性が出てきてしまいますので、分割方法の指定を遺言で行う場合は、なるべく共同相続人同士の財産が、不均衡な内容にならないよう注意が必要です。
なお、このように、相続財産の分割方法の指定を遺言でする場合でも、他の法定相続人の遺留分を侵害している場合は遺留分侵害額請求の対象となりますので、本ケースによる遺言作成の場合であっても、遺留分の侵害に該当してしまわないよう注意が必要です。
3.遺言による相続分の指定
上記の分割方法の指定と似ている遺言書の内容ですが、“相続分の指定“と呼ばれる遺産分けの方法もあります。
簡単に言ってしまえば、法定相続分とは違った相続分で相続をさせるというものです。
例を挙げて説明すると、法定相続人がA、B、Cの三人兄弟のみで居た場合、法定相続分が1/3ずつの場合として考えてみてください。
この場合に、当事者としては法定相続人であるこの3人に、遺言でA4/6、B1/6、C1/6とする場合のように、独自の相続割合の指定を行う場合を言います。
基本的に各相続人に財産を残したいけれど、その法定相続人のウチの一人に、まだ経済的に自立できていない人がいる場合や、特に介護や家業の支えになってくれた方がいる場合などに、感謝の意味を含めて相続分を多くしたい場合に、相続分の指定を行うことが有用になります。
また、この場合でも、上記の項目のように、法定相続のケースと違った内容で財産を残す以上、その内容で遺言する経緯と理由をしっかり記載しないと、やはり相続人の不信感を招きますので、こちらの場合でも必ず記載することをお勧めします。
なお同じく、この相続分の指定においても、遺留分の侵害の恐れがありますので遺言作成時には必ず注意が必要となります。
4.その他、遺言でできることがある。
他にも遺言書を使うことで、子の認知や後見人の選任、遺言執行人の選任などが行えます。
また、付言事項という遺言作成者の考えや家族への思いを記載することもできます。(※法的効力はありません。)
この点は、法的効力がないからと言って軽視されがちなのですが、遺言作成者の思いが相続人に伝わることは非常に重要です。
なぜならば、仮に不公平な遺言の内容であったとしても、遺言作成者の丁寧な説明があれば納得する相続人は多いからです。
何より重要なのは、やはり遺言を作成する以上、遺言作成者がどのような考えや思いで遺言を作成したのかが相続人に伝わるものでなくてはなりません。
その為にも、遺言を作成するときは、是非、付言事項も忘れずに記載することをお勧めします。
まとめ
ここでは遺言書の内容部分について触れてきましたが、形式上、遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言等、様々な作成方法があります。
また、内容面と形式面共々に、遺言書作成の目的に応じて、望ましい作成方法は変化してきます。
何より、形式面を損なって、作成した遺言が無効になってしまっては、元も子もありません。
遺言作成者の考えや思いが相続人に届くように、遺言作成自体がより確実なものとしなければならないことに注意してください。
もしも、遺言の作成方法や内容に不安のある方は、一度専門家に相談されることをお勧めします。相続の開始から売却までのご相談にも対応いたしております。
なお、相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。