こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。
もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。
さて、ここでは前回に説明した、公正証書遺言について、さらに深堀してお話を進めてまいります。
より具体的に、公正証書遺言を作成するにあたり、準すべき点、公正証書遺言が出来上がるまでの大きな流れ、基本的に発生する予算に必要書類などについて、説明していきます。
目次【本記事の内容】
1.公正証書遺言作成前の準備2点
公正証書遺言に限った話ではないのですが、まずは以下の二点について考えを固めておく必要があります。
①相続する財産を明確化すること
②財産を渡したい人を決めること
これらが決まってもいない段階で、公証役場に行っても、先方に迷惑を掛けてしまいます。
考えが決まっていないのにいきなり専門家へ相談をしても、話を次に進めることができません。
1-1.①相続する財産を明確化すること
まずは遺言者自身の財産の洗い出すことから行いましょう。
主な財産としては、預貯金、不動産、株式です。
これらの財産については、おそらく自宅にあるであろう、下記の書類等から把握することが可能です。
・預貯金…通帳を確認します。
・不動産…毎年届く「固定資産税納税通知書」を確認します。
・株式…毎年証券会社から届く「取引残高報告書」を確認します。
1-2.②財産を渡したい人を決める
上記で洗い出した財産情報をもとに、誰に財産を渡したいのか決めていただきます。
専門家の意見を聞いた結果、後で、考えが変わるというコトは十分にありえますので、とりあえず、暫定的に決める形でもいいかもいいです。
なお、ここで財産の相続先を決めるポイントがの一つあります。
特に、預貯金などがそうなのですが、金融機関の支店や口座番号で区切るで止め、具体的な金額の指定まではせず、割合で指定することです。
相続が実際に発生する将来の時点で、指定した金額で金が残るかまでは不確実だからです。
OKな事例
- 全財産は長男 山田太郎へ。
- 不動産は妻 山田花子へ、それ以外の預貯金は長男と長女で2分の1。
- 全財産を長男・次男の2人に2等分。
- 自宅 地番○○は長男、マンション 家屋番号△△は次男、預貯金 □□銀行大阪支店 口座番号123456は三男。
- 全財産を弟と妹に2等分。
NGな事例
- 妻・長男・次男にそれぞれ300万円。
- 長男 山田太郎には1,000万円、不動産は長女 山田花子へ。
2.公正証書遺言の作成の流れ
次に、公正証書遺言を作成するまでの大まかな流れをご案内します。大きく分けて、下記の様に5段階に分かれてきます。
①遺言書内容の原案作成
②必要書類の準備
③公証役場へ予約する(原案と必要書類の提出)
④公証人との打合わせ
⑤作成当日
これらの5つが大きな段取りとなってきます、以下、順に確認していきましょう。
①遺言書内容の原案作成
遺言書の原案は公証役場が考えてくれるものではありませんので、自分で作らなければいけません。
誰に、どの財産を相続させるのか、慎重に考えて原案を作ってください。
もし遺言書の原案の作り方や、各種法的な関係性や注意点にも配慮しつつ作成したいようでしたら、最初の段階から司法書士といった専門家に依頼されることをお勧めします。
②必要書類の準備
原並行して、必要書類の準備も進めていきましょう。
遺言者本人の印鑑証明書・財産資料・身分証・戸籍謄本。
それに相続先となる相手方の戸籍謄本や住民票も必要になります。
③公証役場へ予約する(原案と必要書類の提出)
上記までの準備ができたら、公証役場へ提出をします。公証役場側での確認がされ、不備が無いようでしたら、作成日の予約が取れるようになります。
④公証人との打合わせ
必要情報の提出が終わりましたら、ここから具体的に、公証役場との遺言書案の打合せが必要になってきまし。
内容修正などのやり取りを含めて、期間的にも2週間〜1ヶ月程度の余裕を考えておくべきでしょう。
実は、この遺言書案の打合せが重要です。
完成後の遺言書がしっかりと執行できるように、記載する財産類は間違いなく記載されていなければなりません、また、財産の特定も分かりやすい内容で遺言が残されなければいけません。
特に不動産については登記簿謄本(市役所等で取得する固定資産税評価証明書も)を、預金口座については通帳コピーが必要です。
⑤作成日当日
上記までの調整を重ねながら、内容が確定次第、日程を決めて証人2人と公証役場へ向かいます。(※証人がいなければ、費用を払うことで公証役場で手配してくれます。)
そして、公証人立会いのもと作成手続きが進められていきます。(公証人手数料はこのときに現金で持参するようになっています。)
当日作業の具体的な流れは別の機会で説明できればと思うのですが、公証人から証人(2人)を介して本人確認に関する質問をしてもらい、筆記された遺言書内容を遺言者と証人に読み聞かせをしてもらいます。
その後、口述の遺言書内容に間違いが無ければ、各自署名押印をし、最後に、公証人が、民法の規定方式に従い、署名押印をして終わります。
3.公正証書遺言作成の公証人手数料
公正証書遺言の場合は自筆証書遺言と違い、手数料や証人への報酬が発生します。
また、その金額は遺言により相続させ又は遺贈する財産の価額を目的価額として計算されます。遺言は、相続人・受遺者ごとに別個の法律行為になるからです。
公証役場に支払う手数料は以下の通りです。
遺言書記載の財産の価額 | 手数料 |
100万円以下 | 5000円 |
200万円以下 | 7000円 |
500万円以下 | 11000円 |
1000万円以下 | 17000円 |
3000万円以下 | 23000円 |
5000万円以下 | 29000円 |
1億円以下 | 43000円 |
もしも、1億円を超え3億円までの内容を遺言書に残したい場合は…、
5000万円ごとに1万3000円加算されます。
3億円~10億円までの規模であれば、5000万円ごとに1万1000円加算されます。
さらに、10億円を超える部分は5000万円ごとに8000円がそれぞれプラスされますことになります。
なお、1億円以下の時は、更に手数料額に11000円がプラスされます。(※手数料令19条)
例えば遺言で3人(A・B・C)に遺贈する旨書いた場合で考えてみましょう。
A⇒2,000万円、 B⇒1,000万円、 C⇒500万円の内容にて遺言書で財産を残す場合は?
23,000円+17,000円+11,000円+11,000円(1億円以下加算)=62,000円となります。
【※.1公証人が病院などに出張する場合は手数料が1.5倍~2倍になります、またその場合公証人の日当にて約2万円程度、別に交通費もかかります。】
【※.2各地の公証役場に確認が必要です。また、出張希望の場合は、時間が指定できないことも多いです。】
4.公正証書遺言作成の必要書類
必要書類は以下の通りです。
※ただし、ここれは基本的な例として紹介しています、事案により別の書類が必要になる場合がありますので、ご自身で作成されたい方は、事前に公証役場と確認されることをお勧めします。
・遺言作成者本人の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
・遺言作成者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本
・相続人以外の人に遺贈する場合は、その人の住民票
・相続財産の詳細が分かる資料
※預貯金⇒通帳など。
※株 式⇒取引残高報告書など。
※不動産⇒登記事項証明書+固定資産税課税明細書(評証明書)など。
まとめ
やはり、確実な遺言を残すには公正証書遺言が一番です。
しかし上述にて説明させていただいた通り、費用は発生しますし、遺言の作成をする上での公証人との打ち合わせや、必要書類(戸籍・不動産情報)の収集など、大変手間がかかります。
スムーズに公正証書遺言を作成するためにも、専門家に依頼するのもよいでしょう。
当事務所では公正証書遺言作成のご依頼も積極的にお受けしております。
手続き上の代理だけでなく、どういった内容にすべきか、一次的な承継先だけではなく、遺言書が完成した後の執行に関する部分や、予定している相続人が遺言者より先に死亡したケース等のリスク想定した提言もさせていただきます。
また、その他相続の開始から売却までのご相談にも対応いたしております。
なお、相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。