こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。
もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。
さて、若い方や現役世代の方であれば、お金の管理は基本的に銀行の口座にて管理されていることが多いと思います。
しかしながら、年配者の方であれば、一定の層で資産を現金で、しかも何故か銀行口座に預けることなく、いわゆるタンス貯金という形で管理されている方がいらっしゃいます。
高齢者の方であれば、気軽にATMで現金を出すことが難しかったり、インターネットでの決済などそもそも無縁である方も多いので、気持ちとしては分かります。単純に手元に物理的にお金があることが安心と感じる方もいるのかもしれません。
しかし、このタンス預金が、思わぬ相続のトラブルになることが多いです。
もしも自分の親がタンス預金をしているのであれば、それは絶対に辞めさせたほうがいいです。
その状態で相続が発生したが故に発生するトラブルを回避する為です。
ここではタンス預金関して、相続紛争や相続税申告の観点からお話していきたいと思います。
1.タンス預金が原因で紛争に発展
少し視点を変えてみて考えてみましょう。
通常、お金を銀行口座に預けてあるとして、相続発生の連絡が金融機関に伝わるとします。
この場合は、上限150万円までの当座のお金を別として、基本的に親族が勝手にお金を引き出せないように、金融機関によって口座が凍結されます。
その理由は何か?
遺産分割協議など、預貯金の正式な分配が決まるまで、相続人の誰かが勝手お金を引き出せない様にして、紛争が発生しない様にするためです。
単純に考えて、もしも相続が発生した瞬間に、相続財産の一つである現金がタンス預金の状態で、被相続人に家に保管されていたらどうなるでしょう?
タンス預金を発見した法定相続人が他の家族に対して黙って故意に使い込む可能性が出てきます。
また、勝手に使い込むつもりが無かったとしても、相続が発生した時点で、最初からいくら保管されてたものなのか? 預金通帳のように、客観的に見て分かるものがありません。
結果的に、少しでも仲が険悪な親族同士であった場合、タンス預金の存在そのものが原因で『勝手に使っただろう!使っていない!』といった争いが発生する恐れがあります。
また、親族同士が険悪でなかたっとしても、タンス預金を使って、葬式屋や遺品整理などの費用に充てたとしても、通常の預金引き出しで管理する場合よりも、より厳重に領収書や明細を保管しておく等の対策をとっておかないと、後々、無用な紛争を発生させる原因になります。
このために、親が自分為にと思いやっていたタンス預金が、相続発生後には容易に紛争を発生させる原因になることがよく分かります。
実際にも、この相続財産がタンス預金であったことが原因で、相続人同士が喧嘩になり、調停や審判の手を借りなければならなかった、ご相談者様もいます。
このように、普通に考えるだけで、相続における紛争防止という観点で見れば、親が現金をタンス預金している状態は何一ついいことがありません。
日常で使う一定の金銭を取り置くのと区別して、キチンと口座で管理いただいたほうが良いです。
2.タンス預金と税務調査
また、タンス預金にしておけば、 税金が課税されないと考えて隠し持っている方がいるのも事実でしょう。
しかし、そもそもタンス預金の現金は、本当に税務署にバレずに納税を逃れることができるものなのでしょうか?
相続の観点から見ても、当然のことながらタンス預金も相続財産に含まれますので、当然のこと、相続税の申告の必要性があれば、それも財産に含めなければなりません。
また、税務署は税金に関して非常い強い捜査権限を持っており、過去の所得から被相続人にどの程度の財産があるかぐらいは把握しています。
その為に、過去の収入や勤務形態などを総合し、それなりに財産があるはずの家庭から相続税の申告がされていない場合や、申告しても、その額がやけに少ない場合であれば、税務による調査が始まることになります。
税務署の権限で調査を開始されれば、銀行や証券会社に照会しまでして、被相続人や家族の口座の残高、出入金まで調査することができるので、家族の別の人間の預金口座に預入れしても見つかります。
また、税務署の調査は過去何年にも遡って行われます。
その場合、もしも過去に使用目的を証明できない100万円以上の出金の記録がある場合には、タンス預金の疑いがかけられて税務署が税務調査が開始される恐れが高くなります。
結果的に、こうしてタンス預金はこの税務調査に見つかることが多いようです。
3.タンス預金を隠しての相続税申告ペナルティ
では、タンス預金を隠して相続税の申告を行って、税務調査によって修正申告の指導が入った場合はどうなるのでしょう?
その場合は、以下のペナルティが課せられる可能性があります。
- 過少申告加算…税相続税の申告はしたが、その額が過少である場合に課せられる加算税。
- 無申告加算税 …申告期限までに申告そのものを行わなかった場合に課せられる加算税。
- 重加算税…相続財産を隠蔽して申告を行わなかった場合など、過少な申告を行った場合に課せられる加算税。
タンス預金で相続税を減らそうという発想は、そもそも節税ではなく“脱税”と言えます。
上記のとおり、税務署に見つかる可能性も高いだけでなく、発覚すると上記のペナルティが課せられるので、タンス預金も含めてきちんと相続税申告をするべきでしょう。
もしも相続税が発生する見込みで、その上で合法的な節税対策を希望される場合なら、小規模宅地の特例や配偶者特例を利用することが出来ます。
また。生前の対策なら贈与税の基礎控除を利用した生前贈与などもあります。
場合によってはこれら両方をうまく組み合わせることで、相続税対策をすることができます。
4.タンス預金と遺産分割の関係
相続税の観点からだけでなく、タンス預金も相続財産なので遺産分割の対象に含めて、その分け方を相続人全員で協議する必要があります
被相続人と同居していた家族がタンス預金を隠して独り占めしようとする事態なども実際ありありますが、タンス預金についても、もしも発見したならば、他の相続人も遺産として受け取る権利があるので、絶対に隠さず、相続人全員で遺産分割をするようにしてください。
タンス預金を含め相続財産を隠す行為自体が、他の相続人に損害を与える行為であり、裁判に発展した場合、損害賠償義務を負う可能性があります。
また、紛争防止の観点からも、ご家族の方が最初から、タンス預金など、杜撰なお金の管理をしないように注意しておくことが一番です。
5.厄介なのは貸金庫
タンス預金とは少し違うのですが、意外に厄介なのが貸金庫の契約が残っていたことが後で発覚する場合です。
預貯金の相続手続きをしているときに、金融機関へ照会してい最中に貸金庫が見つかったりすることがあります。
当然この場合でも、貸金庫内などから後で発見された財産も、相続財産に含まれるために、同様に遺産分割協議と申告が必要です。
また仮に、『貸金庫の財産なら税務署にバレないだろう。』と考えて、申告の財産から除外したとしても、おそらく税務署には見抜かれる可能性が高いです。
もし、税務署の調査が入った場合、銀行口座の調査で貸金庫使用料が引き落とされてい履歴から、貸金庫の存在はすぐに把握されます。
また、税務署は貸金庫の開扉履歴まで調査可能なので、仮に被相続人が亡くなる直前・直後に貸金庫が開けられているなどの履歴があると、財産を持ち出しまで疑われることになります。
どのみち、中から現金や高い資産価値のあるものが出てくると、後で問題に発展してしまうことが十分考えられるので、貸金庫の中にあった現金についても漏れなく親族同士の遺産分割協議と税申告をするべきです。
まとめ
上記までにまとめてみた通り、タンス預金を発見して、相続税を誤魔化そうとしても、税務署にはバレてしまいますし、税金を逃れることはできません。
さらに最悪の結果、脱税の扱いになり違法行為と評価されてしまいます。
また、発見した相続人が正直に、税申告しようとしていても、タンス預金が発見された状況に応じては、相続人同士の間で、無用な疑念や緊張が生まれる要因になります。
その為に、最も簡単な紛争防止の相続対策としては、家族に最初からタンス預金などさせないという心構えが必要になってきます。
特に、これから相続が発生しそうな高齢のご親族がいる場合など、善かれと考え、手元に多くの現金を置かれている方も多いので注意が必要です。
その上で、認知症なども含め、高齢者の方の口座管理が心配であるなら、信頼できる親族による任意後見契約の締結や、生前贈与や信託で、予め次世代の方に財産管理を託すなど、法的にもより有効な手段を検討いただくことをお勧めします。
これらの法的に確立された財産管理や、次世代への安全な財産承継についても、当事務では相談可能です。
是非ともお気軽にお問い合わせください。
相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。