こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。
もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。
さて、相続が始まり、実家不動産を売却しようと思った場合、何社かの不動産業者に査定をお願いした中の業者に、専任媒介依頼を頼むのが一般的です。
しかし、複数の不動産業者に連絡をして、内見を経て査定をしてもらうのは労力を使いますし、それぞれの業者に断りを入れるのにも気が引けるものです。
そういった状態の中で、漠然と不動産の売却方法について、インターネットで調べていたりすると、不動産売却の一括サイトを発見することがあるかと思います。
実際に、こういった一括査定サイトを利用すると、どうなるのでしょうか?
後々しつこい営業員が不動産業者から来たりしないか?
そもそも査定価格に信頼性はあるのか?
ここでは、わたくし自身が不動産屋ではないので、あくまで第三者的な立場から解説をしてみようと思います。
また、遺産分割協議の前後で一括査定サイトを使うことで、 思いがけなく揉め事に発展するケースもあるので、この点についても触れていきたいと思います。
1.一括査定サイトを利用した後の流れ
まず、一括査定サイトを通じて物件や個人情報を送信すると、各社の不動産業者からメールや電話で連絡が来ます。
例えば、一括査定サイトで10社から査定書を受け取ることになった場合は、その10社全てから営業されることになるのがほとんどです。
基本的に、不動産取引では高額なお金が動くために、業者にとって商材を手に入れる為にも売主側に立つことには大きな意味があります。
そして実際に、どの業者も査定依頼者からは専任媒介依頼をしてほしいと考えます。
そのために、どの不動産会社も基本的には、査定自体は無料で、売主との接点を作ることを優先にしています。
一括査定サイトを利用する際は多くのケースで、「訪問査定」(現地査定)と「机上査定(簡易査定)」を選べるようになっています。
初見の時点で各社不動産会社に対して、まだ、それほど深く関わりたくない場合であれば、机上査定 (簡易査定) を選んだ方が無難と言えるでしょう。
2.机上査定 (簡易査定)の価格は信用に足るものなのか?
机上査定 (簡易査定)は、あくまで物件の基本情報をサイト上のシステムに入力して算出された数字にすぎません。
そのために、どうしても参考程度の情報と捉えるしかないです。
少しでも精度の高い査定、つまり、想定される売値を検討したいのであれば、不動産業者の担当者に、物件への訪問査定を依頼して、物件現物を見てもらったうえで査定算出してもらった方がいいです。
たとえ建売住宅であったとしても、不動産は一点ものとして考えられています。
前面道路に周辺の環境、土地そのもの形状に加えて近隣物件との関係性など、どれ一つとして同じ不動産が存在しない以上、個別の具体的状況を考慮して査定した情報でなければ、一切信用には値しません。
誰よりも不動産会社の人間こそその事実を理解しているので、当然の話、利用者が机上査定(簡易査定)で依頼しても、どの業者も訪問査定に話を進展させようとします。
その時点で、ご自分に合わない会社や担当者であると感じた場合は、すぐに断る勇気が必要です。
そのために、 ただ何となく売却価格が知りたいだけとか、面白半分で一括査定サイトを利用するのであれば、避けたほうが賢明です。
3.査定はあくまでも査定
仮に、実際に訪問査定で算出された金額であっても、必ずその金額で確実に売却できる保証はどこにもありません。
査定はあくまでも査定であって、実際に売れる金額ではないからです。
前述したように、不動産業者はどうしても売主側の立場で仲介をやりたいので、ややもすれば自社の査定をよく見せようとする会社も出てきます。
例えば下記のように…、
- 「A社の査定は、2,000万円」
- 「B社の査定は、1,900万円」
- 「C社の査定は、2,300万円!!」
このように各社の査定額が出そろったら、やはりほとんどの方はC社を選んでしまうと思います。
しかし、繰り返すようですが、査定はあくまでも査定です。
C社からすれば、最終的には2,300万円で売れずとも、専任媒介契約さえ取れば、後は、実際の売却価格で、顧客の期待を裏切っても仕方ないと考えるかもしれません。。
実際に、最低の段階で、あまりにも高すぎる期待値で、売却価を提示してしまい、その後、長期間の塩漬けになってしまう相続物件もあります。
少なくとも、売却主からの視点で、“査定を通じて不動産業者は、先ずは専任媒介を得ようとする目的がある。”ということだけは理解しておくべきです。
どうしても査定金額だけで選んでしまいそうですが、それよりも遥かに重要なのは、信頼できる担当者がいる会社を選べるかどうかです。
信頼できる不動産会社スタッフであれば、査定物件の良いところだけではなく、価格が低くなる理由や、売却が難しくなる問題点、注意点についてまで必ず説明してくれます。
当事務所でも、そういった信頼できる不動産業者にしか相続物件の売却案件は頼みません。
4.遺産分割協議時に不動産査定金額を持ち出す家族は揉める。
実は本記事で一番お伝えしたかったのが、ここからの内容です。
まず結論から言って、遺産分割協議や相続登記すら完了していない時点で、 不動産売却見積の一括査定サイトを利用するのは止めるべきです。
重要なので繰り返しますが、これは本当に止めるべきです。
当事務所は相続手続専門の司法書士事務所なので、実際にお客様のご家族の誰かが、売却見積サイトの一括査定を取られたことで、相続が紛争状態に発展してしまったご家族を何組か見てきました。
特に、別にすぐに売る予定が無い場合であるにもかかわらず、単に遺産分割時の不動産価値を知りたい目的で不動産売却の一括査定サイトを使う方は危険です。
しつこいようですが、査定はあくまで査定であり、現実の売価ではないからです。
しかも、その上で媒介契約を取りたい思惑を持つ不動産会社が、実売価格よりも高い金額査定を出してくるわけですから、そんな不安定な評価金額を遺産分割協議時の話に持ち出すのは、自分から紛争の原因を作り出していることになります。
特に、株や預貯金など、複数の種類の相続財産が混在している時に、 実情に合わない不動産の金額を家族の誰かが提示してきた場合は、かなり遺産分割協議が混乱します。
しかも、往々にして査定金額をしらべた家族自身が、良かれと思って、遺産分割協議に不動産会社を介入させてしまった場合などは、なおさら混乱の収拾が付きにくくなります。
もしも、相続手続きの最初で、すでに査定をしてもらってしまっていた場合であっても、一旦は遺産分割協議ないし相続登記が完了するまでは、その情報は出さずに黙っていたほうがいいです。
不動産の売却後、相続人全員で売却金を分け合う換価分割などであれば、まだいいのですが…、
持分割合の帰属を巡っての代償分割時に査定金額の話を持ち出すと、「実家ならもっと高く売れるハズだ!」「そんなワケがない、もっと安いにきまっている!」などと、余計な争いの原因を増やすだけの結果になります。
少なくとも、他の相続人全員を含め、相続手続きの方針や全体像が定まってもいないような段階で、思い付きで不動産会社と物件売却の話を勝手にすすめてもロクなことはありません。
良心的な不動産会社スタッフであれば、『それはちゃんと相続登記手続きが済んでからの話ですよ。』と、いい意味で断ってくれる方がほとんどなのですが、残念ながら、中にはそうじゃない業者さんもいます。
まとめ
不動産売却の一括査定サイトを利用するメリットは、どこの不動産業者に頼んでいいか全く分からない状態方や、 机上査定(簡易査定) で、参考と割り切って価格を知りたい場合などは、利用するメリットがあると思います。
しかし、その反面で、実際には販売不可能な高い査定金額を出してくる業者がいたり、しつこい営業活動を重ねてくるしてく業者がいるために、一線をひく勇気も必要です。
少なくとも、軽い気持ちで利用しない方がいいことは確かです。
そして何よりも重要なのは、利用するタイミングです。
遺産分割協議や相続登記すら完了していない時点で、 不動産売却見積の一括査定サイトを利用するのは止めておきましょう。
当事務所であれば、相続開始後にご相談を頂ければ、相続手続きや、財産処分の検討に先立ちまして、手続きの全体像をお伝えすることが可能です。
他にも、相続した不動産の売却処分(換価分割)でお困りなら当事務所まで是非ご相談ください。⇒不動産相続 相続登記お任せプラン 相続の開始から売却までのご相談にも対応いたしております。
なお、相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。