こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。
もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。
さて、遺産分割証明書という言葉をご存知でしょうか?
遺産分割協議書については、聞いたことがあるという方も多いとおもいます。当ブログでも既に何回か紹介させていただきましたが、(※参照⇒相続財産の名義変更のための遺産分割協議書の作成)おそらく、このページへ来ていただいた方は、相続手続きについて、ご興味をお持ちの方かとおもいます。
ここでは、遺産分割協議書の作成の前に、気を付けるべきポイントや、遺言書が在った場合などとの関係性について、紹介していきたいと思います。
遺産分割協議と遺言書
相続財産の分け方には、以下、大まかに法律で決められた二通りのルートが存在します。
簡単にいうと、
①遺言書があれば遺言書の通りに分ける。
②遺言書がなければ、相続人全員が遺産分割協議をする。
といった形です。
「配偶者が2分の1、子供が2分の1×人数割」という遺産の分け方も多いですが、これを「法定相続分」といい、分け方の目安として法律(民法900条)が定めているものです。
ただ、この法律上の法定相続分かならずしも相続人が法律上に拘束されるものではなく、相続人全員が同意さえすれば、どのように分ける事も可能です。
法律上、書類を作らなくても、口頭の意思表示だけでも合意は成立します。
しかし、遺産の分け方が決まったら、遺産分割協議書を作成しますが、これは、相続人全員で決めた「遺産分割の内容」を記した書類で、「言った言わない」の問題をなくすために、相続人全員で確認したうえで署名押印(実印)し、各自が1部ずつ保管する必要があるためです。(※法律上、書類を作らなくても、口頭の意思表示だけでも合意は成立します。)
作成に不安がある方は、司法書士などの専門家に依頼するのがいいでしょう。
遺産分割協議に取り組む前に、遺言書を探そう
さて、上記に説明した遺産分割協議に取り組む前に、遺言書の有無を確認したほうが良い点について、ここでは説明します。
何より、冒頭で説明しました通り、原則的には遺産分割協議で決める遺産分割の内容と、遺言書が残されていた場合では、遺言書の効力が優先されるからです。
この事は、遺言は、遺言者の意思を表示したものなので、法的にも、尊重されているからです。
また、遺言の効力は、遺言者の死亡の時から効力が発生します(民法985条1項)。つまり、被相続人の死亡した時点で、遺言の内容に基づく権利関係の変動が発生したことになるのです。
そのために、例えば、遺産分割協議を実施した後に、遺言書が発見されたときに、相続人全員が、遺言の存在及び内容を知ったうえで改めて遺産分割をやり直す事になる場合もあります。
また、故人が遺言書を残していれば、遺族が行う相続手続は格段に楽になります。
ただし、遺言書に関しては、いくつかの特有の注意点がありますので、ココでご確認をお勧めいたします。
遺言書の発見と、遺産分割協議の関係
まず、原則としまして、相続人は、遺言の内容と異なる内容の遺産分割を成立させることは可能です
したがって、遺産分割後に遺言が見つかった場合であっても、相続人全員が既に行われた遺産分割の内容に合意している場合は、従前の遺産分割の内容を遺言に優先させることに問題はありません。
ただし、ここで問題になるのは、相続人全員が、遺言の存在及び内容を知ったうえでの合意する必要があるという事です。
そもそも法律上、民法891条5号によって、遺言の隠匿は欠格事由にあたり、相続する資格がなくなってしまう危険性があります。
その為に、遺言が見つかった場合は、どのたタイミングで在っても、相続人全員に知らせ、内容を確認できるようにしてもらった方が良いです(※後に説明する家庭裁判所検認の手続をとるのがより安全。)。
遺言書発見により、相続人全員遺産分割をやり直す必要がある場合
しかしながら、以下の4つの場合に関しては、遺産分割時に関与した相続人全員が合意していたとしても、従前の遺産分割の内容を優先させることができません。
これらの場合は、改めて遺産分割をやり直せば、遺言内容と異なる内容の遺産分割を行うことができます。
①遺言執行者が選任されている場合【1012条】
⇒遺言執行者によって遺言内容が執行される遺言内容であるため、遺言執行者の同意を得ておく必要があります。
②遺言により認知された者がいる場合【民法781条第二項】
⇒認知により相続人となった者を含め、遺産分割をやり直す必要があります。※それまで知らない親族が突然増えるケースになります。
③相続人以外の者に遺贈させる内容の遺言の場合【民法964条】
⇒当遺言書に指定されている方(この場合、受遺者と表現されます。)を含めた上で、遺産分割をやり直す必要があります。
④遺言により推定相続人が廃除されていた場合【民法893条】
⇒廃除された相続人を除いての遺産分割が必要となります。
この様に、場合によっては、せっかく遺産分割協議のやり直しとなるのは、かなり煩雑になるのと、ややもすれば、相続人が、遺言が見つかったことをきっかけとして、既になされた遺産分割の内容が無効であると、相続人の間で話が揉めだす切っ掛けになってしまう事も危惧されます。
その為、相続発生後は、被相続人が、ほぼ間違いなく確定的に遺言書を残すような状況でも無い限り、可能な範囲で、遺言書の捜索をされた方が良い点が挙げられます。
遺言書を探す。
公正証書遺言の場合
公正証書遺言の場合は、全国の公証役場に設置されている「遺言検索システム」により確認することが可能です。
被相続人の戸籍謄本と、検索システムを使う相続人の戸籍謄本を公証役場に持参すれば、被相続人が公正証書遺言を残していたかどうかを検索することが可能です。検索するだけなら、公証役場は、故人が遺言を残した公証役場でなくてもOKなので、最寄りの公証役場に行きましょう。
ただし、調査の結果、遺言書が残されていることが判明した場合でも、その遺言書の請求については、最寄りの公証役場ではなく、遺言が実際に作成された公証役場に対してする必要があります(郵送により交付を受けることも可能です)。
なお、当然ですが、遺言書を残した本人が亡くなる前の場合は、あくまで本人しか、検索することが出来ません。家族が作成者の遺言書を検索することはできません。
また、令和2年7月より、自筆証書遺言の法務局保管制度が始まりましたが、この制度を利用していた場合も、公正証書遺言と同様に、全国の法務局で検索することが可能であります。
自筆証書遺言の場合
それ以外の遺言、つまり自筆証書遺言の場合は、仏壇の中や、金庫や貸金庫の中、ベッドの下、通帳などを保管している引き出しの中などに、遺言書が保管されていることがあります。
※貸金庫を相続発生後に空ける場合は、その他の財産の隠匿が発生しないようにご注意ください。例えば、貸金庫の内容物について、後日争いにならないようにするために、公証人の立会いを求め、事実実験公正証書を作成してもらう事も可能です。
「遺言書なんて残していないだろう…。」という先入観から遺言書の有無を確認せず、遺産分割協議が終わった後に、発見される場合もあります。
先ずは思い込みにとらわれず、一度は、しっかり確認頂くことをお勧めします。
自筆証書遺言の場合の検認
残した遺言書が、自筆証書遺言だった場合には検認手続きが必要になります。
遺言書は茶封筒に入れ、外から内容が見られない状態にして保管することが原則です。
この封筒は、遺言書を見つけた相続人が、その場で開封してはいけません。家庭裁判所に出向き、裁判官が開封し、内容の記録を行います。
もともと封がされていない遺言書でも、検認手続は必要になります。
検認は遺言書の内容を明確にし、その後の偽造・変造を防止するために行います。
※その遺言書に法的な効力があることや、本人が実際に書いたものかを判断するために行うわけではありません。
※検認には必ず相続人全員が立ち会わなければいけないわけではありません。出席するかどうかは各自の判断に任されます。
検認を行う家庭裁判所は、故人の最後住所地を管轄する家庭裁判所です。
必要書類は、故人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、収入印紙800円が必要。
検認の申立てをする際は、家裁ホームページの申立書に必要事項を記載し、家庭裁判所に提出することで可能です。
検認は絶対にやるべきか?
「面倒なので検認なんてやりたくないです。私らの家族は仲がよく、遺言書の偽造なんて絶対しませんわ。」
このような意見やご質問を受けることがあります。
しかし、例えそうであっても、検認は絶対に必要です。
法律上も、検認手続を怠った者には5万円以下の過料に科せられるという決まりになっています。【民法1005条】
また、自筆証書遺言によって遺産を実査に名義変更する場合(相続登記や預金手続き)。どの道必要になります。
何故ならば、法務局や金融機関に於いて、検認済証明書の提出が求められるからです。これがないと、名義変更はできませんので、結局、検認は必要になります。
煩わしい検認手続は、遺族の負担を増やしてしまいます。その点、公正証書遺言や、自筆証書遺言の法務局保管制度を使えば、検認が不要となりますので、互角族の遺言書作成の際にはご検討をお勧めいたします。
まとめ
今回の記事は、遺産分割協議書の作成の前に、気を付けるべきポイントや、遺言書が在った場合などについて紹介させていただきました。
遺産分割協議が必要なケース、遺言書が在った場合でも、もしも、財産の種類が多い場合や、登記が必要な場合など、正確な財産情報や相続手続きの全体像を把握するのが難しい際には、相続手続きについて総合的な対応ができる、司法書士事務所に依頼する必要があります。
当事務所に来ていただければ、お話をじっくり聞いて、専門家との連携により全ての手続きを一括サポートさせていただきます。
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なお、相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。