こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。
もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。
さて、前回は共同相続人同士で連絡が取れないケースに関して解説しました。
遺産分割協議は、相続人の全員が参加することが必須ですが、親族に遺産分割の呼びかけをしようと思っても、家族が不仲であったり、行方不明であったりと、全員が揃うことができない場合など、家庭裁判を通して、遺産分割調停を申し立てる場合があります。
しかしながら、家庭裁判所での調停という言葉をきいたことがある方はそんなに多くないと思います。実際何をしているかを知っている方も少ないのではないでしょうか。
ここでは、家庭裁判所の遺産分割調停についてまとめてみました。
調停は相続人同士の「話し合い」
家庭裁判所における手続きとはいっても、調停とは、裁判官が一方的に判決を言い渡すわけではありません。
あくまで、相続人同士の話し合いであり、家庭裁判所から選ばれた調停委員が間に入り、落としどころを探っていく手続になります。
この調停手続きで、最終的に合意に至らないことも多々ありますが、その場合は、審判という手続に移ります。こちらの場合は裁判官が結論を言い渡す形で、遺産分割の内容が決まっていくことになります。
令和5年度(2023年)の司法統計を見ていきますと日本全国で1万3,868件の調停が行われ、調停成立が6,125件、申立人の意見が認められた認容が1,172件(あわせて約52.6%)、審判に進んだのが4,176件(約30%)、調停の取り下げなどが2,132件(約15.4%)となっています。
参照:司法統計令和5年度
つまり、全体を見ると、5~6割程度は調停の段階で決着がつくと読み取れます。
調停が不成立になるケースは、正当な理由なく欠席を続ける相続人がいる場合や、一方が極めて不合理な主張を取り下げない場合が挙げられます。
調停は、あくまで話し合いの場ですので、どうしても譲り合いの気持ちが必要になるのです。
調停では、当事者同士顔を合わせることがありますが、2回目以降は、調停委員と交代で話をしていくことになり、基本的には、顔を合わせることはありません。また、弁護士を代理人にすることも可能なので、どうしても出席したくない方は、早めに弁護士に依頼するのがいいでしょう。
調停は、1~2か月に1回のペースで行われ、平均でも5回以上行われます。
調停が不成立となり、審判まで進んだ場合、基本的には、法定相続分を基準とした分け方に落ち着く可能性が高くなります。
また、裁判ではないとは言え、当然のことながら寄与分や特別受益の提起については、主張者に証明責任が存在するため、証拠がなければ認められないのが実情です。
そのため、自分で調停の申し立てをする場合であれば、相応の覚悟をもって臨む必要があります。
遺産分割調停の必要書類は下記の通りです。申立書の記入例は下記の例をご覧ください。
遺産分割調停の必要書類
●申立書
●相続関係を証する戸籍謄本一式
●相続人全員の住民票(本籍地は任意。マイナンバー【※個人番号の記載は無しで!】)
●遺産に関する証明書など
●収入印紙1200円、連絡用の郵便切手
遺産分割調停の管轄
遺産分割調停の管轄は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所になります。
もしも、自身の居住地が大阪府、被相続人の最後の住所地が愛知県、相手方の居住地が東京都である場合は、原則的に東京家庭裁判所が管轄になります。
また、遺産分割調停の場合は、相手方が複数いる場合もあるかもしれません。その場合となれば、相手方のうちの誰か1人の住所地を管轄する家庭裁判所に調停を申し立てます。
例外的に、合意管轄と呼ばれ、当事者間での管轄裁判所の合意が在る場合や、自庁処理といって申立人の住所地の家庭裁判所に調停を申し立てる場合もあります。
しかしながら、合意管轄は複数共同相続人がいる中で、全員の合意が必要であったり、自庁処理の場合も、健康上の都合から遠方に出向くことが難しい場合や金銭的に困窮しており交通費が捻出できないなど特別な事情がある等、どのような場合であっても認められるわけではありません。
このように管轄が遠方になる場合はかなり多いです。その為、必ずしも自分で調停を申し立てるだけでなしに、早めに弁護士への依頼を検討したほうが良いでしょう。
遺産の分け方が決まらないときの相続税申告
相続税の申告は、相続の開始があったことを知った日から10か月以内に行わなければいけません。
しかし、遺産の分け方が決まらないと、相続税の金額を確定させることができません。この場合、各相続人は「法定相続分で相続した」とみなして計算した相続税額を納税し、遺産分割の締結後、あるいは調停、審判の確定後に必要に応じて修正申告を行います。
また、この場合になると、相続税の各種特例は使えないため、財産規模よっては高額税額になる可能性があります。
その後、遺産分割が確定したら、先に納めた税額と、本来の税額の差額は還付されますが、一時的ではあっても多額の相続税を納めることは負担になります。そのため、可能であれば10か月以内に遺産分割を固めたいところです。
まとめ
当事務所では相続手続きのサポートを積極的に行っております。
今回は、家庭裁判所での調停についての情報をまとめてみました。
相続開始の初期にご相談を頂ければ、相続財産の手続きに先立ちまして、対応方法の全体像をお伝えすることが可能です。
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