こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。
もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。
さて、近年「遺産の一部をNPO法人や自分が育った学校に寄付したい」という相談が増えています。今回は、遺産で寄付を行いたいケースのご説明をいたします。
日本ファンドレイジング協会の調査によると、40歳以上の日本人の約21%が、人生の集大成として、遺産の一部を寄付してもいいと考えているそうです。一方で、実際に遺産の寄付を実行する方は1%に満たない状況であり、想いと行動に大きな隔たりが生じています。その原因は一体何かというと、①支援したい団体が明確でない、②手順がわからない、③残された家族の理解が得られない、などが挙げられます。
①と③の問題については、なかなか一筋縄ではいかない問題ですが、②の問題で寄付を諦めてしまうのは大変もったいないことです。ここでは手続の全体像を解説します。
遺産の寄付方法
大きく2つの方法があります。それは①遺言書による寄付と、②相続人による寄付です。
①「私が高いしたら、この財産を〇〇へ寄付します」と遺言書に記載しておく方法を、遺言書による寄付といい、法律用語で遺贈といいます。
②「私が他界したら、この財産を〇〇へ寄付してくれ」と、生前中に親族等に伝え、相続発生後に、相続人が故人の気持ちに従って寄付をする方法を、相続人による寄付といいます。
一見似たような方法なのですが、実はこの2つ、法律的にも税金的にも非常に大きな違いがあります。
寄付の法律的な位置づけ
遺言による寄付は、法律上、故人の財産が、直接、その寄付する団体に移転すると考えます。一方で、相続人による寄付の場合は、故人の財産を、一度、相続人が相続し、それを相続人の意思によって寄付したと考えます。そのため、相続人による寄付の場合は、いくら故人が「寄付してほしい」と意思表示をしていたとしても、相続人の中に、寄付することに反対する者が現れた場合は、寄付を実現できなくなるかもしれません。
相続人が寄付に反対する?
実際に、寄付に反対する相続人が多いのは事実です。寄付をされると、自分たちの取り分が少なくなるので、そういった感情が起こりやすいのかもしれません。
そのため、親族が生前中に「あなたが亡くなったら遺産は寄付するわね」と言っていても、亡くなった後に「やっぱり遺産は私がもらうわ」と約束を反故にされることもありえます。
では、遺言書による寄付であれば、相続人たちの反対を押し切り、確実に寄付することはできるのでしょうか? 答えは、半分正解で、半分不正解です。
遺言書は、相続人全員が同意をすれば、その内容を変更することは可能ですが、遺言書で寄付をする旨が定められている場合には、その寄付を受ける団体の了解がなければ、寄付する意思をなかったことにはできません。
遺留分と寄付の問題
ここで、注意しなければいけないのは、遺留分の問題です。この権利があるため、例えば「全財産を〇〇団体に寄付する」といった遺言があったとしても、相続人は、その団体に対して「遺留分を返せ!」と請求することが可能なのです。
また遺留分を侵害していなかったとしても、自分の取り分が減ることに憤慨し、その団体に対して、「父をそそのかして、遺言書を無理やり書かせただろ!」と詰め寄るケースも実際にあります。そして、「この遺言書は父の本当の意思ではないため無効」と訴えを起こすのです。
「揉めて欲しくないから寄付します」は間違い?
よく「家族が揉めるくらいなら、遺産はすべて寄付します」という人がいますが、実際には、寄付先に対して訴訟を起こすこともできます。相続トラブルを避ける目的で、寄付という手法が有効なわけではないのです。
こういった事態を防ぐためにも、遺言による寄付をする場合には、公正証書遺言によって、公証人からの意思確認を積極的に受けましょう。その点、相続人が兄弟姉妹となる場合(配偶者や子供、父母がいない場合)には、遺留分を気にする必要はありませんので、ご自身の好きな団体への寄付を検討しましょう。いずれにしても遺言書による寄付の場合には、あらかじめ家族の理解を得ておくのが無難です。
遺産を寄付するなら、相続税は課税されない?
寄付と相続税の関係
寄付する財産にも相続税は課税されるのでしょうか。結論は次の通りです。
①遺言書による寄付の場合には相続税は課されません。
②相続人による寄付の場合には相続税は課されます。ただし寄付先が公益性の高い法人の場合には、所定の手続きをすることにより、非課税になります。
遺言書による寄付の場合には、国や公益法人などの場合はもちろん、たとえ、株式会社などの営利法人であっても相続税は課税されません。ただし、株式会社等の場合は、寄付を受け取った法人側に法人税が課税されます。
一方で、相続人による寄付の場合には、相手が国や公益法人等の効用性の高い法人の場合のみ相続税は課税されないこととされています。
そのことから、例えば、自分が入所している老人ホームなどに寄付を検討している場合、遺言書で残しておけば相続税はかかりませんが、そうでない場合は相続人が相続税を払ったうえで、残った財産を寄付することになります。
また、公益性が高い法人に対する寄付は非課税になりますが、検討している法人が該当するかどうかは、事前にしっかりと確認をしなければいけません。また、非課税にするための相続税申告は、必要書類が多く、専門的な論点が多いので、相続に強い税理士に依頼されることをオススメします。
不動産などの寄付には注意が必要
金銭以外を寄付しようとする場合は注意が必要です。
例えば不動産を寄付しようとする場合、そもそも寄付を断られる場合が多々あります。容易に売却が可能であったり、有効利用できる不動産であれば、寄付を受け入れる団体もあるかもしれませんが、そうでない不動産の場合には、寄付を断られてしまうことが大半です。そうのような事態を防ぐため、事前に寄付先と交渉をしておくことが大切です。
遺産以外は非課税になりません
また、相続人による寄付の場合に、「現物では寄付を受けることができないので、監禁したうえで寄付してほしい」と言われ、その通り、換金して寄付をした場合、たとえ相手が国や公益法人だったとしても、相続税は非課税になりません。
相続税を非課税にできるのは、あくまで遺産を寄付した場合に限定されており、換金した財産は遺産として扱われないためです。
遺産の寄付は決して難しい手段ではありません。しかし、法律面でも税金面でも注意点がたくさんありますので、専門家に相談しながら手続きを進めていきましょう。
今回は、遺産の寄付を行う際の注意点と寄付と相続税の関係について、まとめてみました。
今回の記事を参考にしていただいて、遺産で寄付を行うための手続に取り掛かる方もいらっしゃるかもしれません。
ただし、お時間等が無く、自分で手続きを実施することが難しい場合や、相続した不動産の売却処分(換価分割)でお困りなら当事務所まで是非ご相談ください。
なお、相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。