こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。
もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。
さて、親を施設に入れるため、住むことのなくなった実家を売却して費用に充てたい。現在、相続の相談ではこのようなお客様が増えています。
しかし、いざ売却に向けていろいろ動いてみると、両親が買って住んでいる実家は、家族だからと言って、簡単には売却できないとう現実に突き当たってしまいます。
あくまでも、その不動産は親本人の持ち物だからです。
法律上も、所有者である本人に売却する意思がなければ、実家を売ることはできません。
では?親が認知症になってしまった後、売却する意思表示ができない場合どうすればいいのでしょうか?
ここでは、現在、多くの方が抱えている実家の売却問題について説明していきます。
目次【本記事の内容】
- 1.認知症になると売買契約が結べない
- 1-1.決済立会時の司法書士本人確認について。
- 2.成年後見人を立てれば売却は可能
- 2-1.成年後見人の選任は慎重に行うべき
- 3.相続問題と認知症問題は併発することが多い。
- 3-1.遺産分割すら不可能になってしまう。
- 3-2.共有状態の場合はさらに厄介である。
- 4.まとめ
1.認知症になると売買契約が結べない
法律行為を行うためには本人の意思能力が必要です。
意思能力が喪失した状態で売買契約を行っても、法律的に無効になってしまいます。
しかしながら、認知症だからと言って、必ずしも意思能力が喪失しているわけではないのですが、不動産取引の現場では、厳格に本人状況を判断して、意思能力が喪失していないかの判断をしながら、取引を進めていくことになります。
特に、司法書士の判断は、不動産売買における当事者の意思確認を行う専門家としても、大きい意味合いを持ちます。
1-1.決済立会時の司法書士本人確認について。
決済とは、売主が登記識別情報や印鑑証明書等の引渡書類を持参し、買主が売買代金(手付金の引いた残代金)を支払う売買の最終場面のことです。
通常、司法書士は売買契約の段階では立会いませんから、この決済の場で、司法書士が買主と売主本人に会って意思能力の確認を行うことになります。(※これから家を買おうとする買主側の意思能力が問題になることは稀ですから、主に売主側の意思能力を重要視します)
司法書士が売主本人に会ってみて、売買の意思能力がないと判断すれば、決済は中止となって不動産取引は流れてしまいます。
一度流れたら、売却はもう不可能となります。
仮に、売買契約書締結の段階で特に何事もなく話が進んだとしても(不動産会社においても、本人確認はされるので、実際問題、認知症になられた方がそのまま売買契約を実施できる可能性は極めて低いです。)、意思能力を判断するのは最終の司法書士ですから、売買契約が無事に済んだとしても決済が中止になる可能性は十分あります。
もちろん不動産業者としても、取引を成立させれば仲介手数料を受け取ることができるので、中には、強引に売買契約を行っていまう場合もあるでしょう。
例えば、決済まで売主本人(認知症の親)の意思確認をせず、家族を代理人に立てて売買契約まで終わらせて、最終の決済段階で、司法書士判断によって中止になってしまう事例が考えられます。
こうなると、お金も時間も全く意味のない行動になってしまいます。
そのために、不動産売却における意思能力は、最初から不備のない状態にしておいてから、不動産取引に臨まれたほうが望ましいでしょう。
2.成年後見人を立てれば売却は可能
不動産の所有者が、意思能力を喪失していて売却が困難である場合には、成年後見制度を検討しなければいけません。
成年後見制度とは、家庭裁判所に対して選任申し立てを行うことによって、意思能力を喪失した本人に代わって財産を管理する人(成年後見人など)を立てるものです。
この成年後見人は、多くの場合は司法書士や弁護士といった専門家が選任されます。(※候補者として親族を指名することは可能ですが、家庭裁判所の審判の結果、専門家が後見人となることが多いです。)
そして、成年後見人となった人が、自宅不動産の売却を行うことになります。
また、成年後見人が就任するだけでなく、自宅不動産の売却の為には、家庭裁判所の許可が必用です。
許可を得るためには、“自宅の売却が本人の為に必要な行為”であるという理由が必要になってきます。
買主が決まれば、この家庭裁判所の許可を得て、決済を行うことになります。
当然、決済にも、成年後見人が本人に代わって出席し、決済当日の司法書士が、成年後見人に対して本人確認を行う形になります。
2-1.成年後見人の選任は慎重に行うべき
しかしながら、一度、本人が成年後見人となったら、そこからは基本的に本人が亡くなるまで、被成年後見人として生涯生活し続けていかなければいけません。
上記のように、弁護士や司法書士などの専門職者が成年後見人に就任してしまえば、当然、それに対しても毎月の報酬が発生することになります。
しかも、家族にとって合わない専門職者が成年後見人になってしまっても、そこから、ずっと付き合い続けなくてはならない関係になってしまいます。
この点、成年後見を立てることが、不動産の売却をはじめ、以後も本人のためになるのであれば、是非とも申立てを進めていくべきですが…、
単に、今現在において、実家不動産の売却のためだけに、親に成年後見人をつけるのは、慎重になるべきだと言えます。
3.相続問題と認知症問題は併発することが多い。
相続手続きと認知症問題は、ある人生の時期において、同時に問題になってくることが、非常に多いです。
例えば、認知症の母親を残して、父親が他界したという状況や、もしくはその逆で、ご両親のどちらかが逝去された後に、残された側の親が、認知症になってしまうといった状態です。
特に、子の立場である方々が既に実家を出ている場合だと、ご存命の親御さんの面倒を見ることはできませんので、施設に入ってもらうしか選択肢が残らないという状況の方も多いです。
しかしここで、親御さんが認知症であることが問題となってきます。
3-1.遺産分割すら不可能になってしまう。
遺産分割も法律行為なので、売買と同様に意思能力を必要とします。
相続登記の手続き上であれば、法定相続分の割合のままにしておいて、とりあえずは意思能力の有無に関係なく、当面の相続登記申請だけを行うことは可能なのですが、結果、親御さんに不動産持分が残るのであれば、売却はできなくなります。
そして、ここでも遺産分割のために、親の為に成年後見人を立てるべきかどうかは、上記で説明した売却準備の場合と同じ話です。
この遺産分割の意思能力についても、司法書士が本人の状況を確認してから協議をできるか判断しますので、売買と同様に司法書士の存在が重要な意味を持ちます。
3-2.共有状態の場合はさらに厄介である。
もしも既に、実家の名義が夫婦共有となっている場合はさらに注意が必用です。
生前からの売却準備であったとしても、ご両親の両名が売主となりますので、この場合には、相続発生の前後関わりなく、ご両名共の意思能力が問題となってきてしまいます。
このように、不動産の名義が共有だと、どちらかの親御さんが認知症にかかってしまうだけで、生前対策が取れなくなってしまいます。
4.まとめ
今回の記事を読んでいただけたら、実家を売却するにあたって親の意思能力が非常に重要であることが、わかっていただけたと思います。
また、売買だけでなく、遺産分割の場面でも、本人の意思能力が必要となります。
いずれにせよ、相続の発生後に実家不動産を売却したいと考える方はとても多いです。
当事務所も多くのご相談をいただいておりますので、悩まれている方は一度ご相談ください。
また、当事務所では相続と売却の総合サポートを行っておりますので、遺産分割から売却までの一連の流れを総合的にご依頼いただけます。⇒不動産相続 相続登記お任せプラン
相続が発生した後、ご実家を売却したいとお考えでしたら、是非当事務所までご相談ください。
なお、相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。