こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。
もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。
さて、前回の記事では自筆証書遺言の作成方法について記載しました。
作成の手軽さや、費用が掛からない面、また財産や家族の内情を他人に知られなくても済む点については、他の遺言書と比べると、自筆証書遺言はとても魅力です。
もしも、ミスを防ぎたいなら、相続の専門家に自筆証書遺言の作成のサポートを依頼することにより、遺言が無効になる恐れや、遺言が発見されない恐れはなくなります。
また、守秘義務が徹底されていますので無論内容も知られなくて済みます。
しかし、そんな簡単な自筆証書遺言だからこそ注意すべき点があります。
ここでは、自筆証書遺言にて、遺言を残す場合の、注意点、想定できる問題点について、お話を進めていきます。
目次【本記事の内容】
- 1.遺言が無効になってしまう、中途半端な財産の特定方法
- 1-1.【部分無効になる記入例】
- 2.自筆証書遺言作成のポイント5点
- 3.被相続人の死後、自筆証書遺言を発見したら?
- 4.できるだけ公正証書遺言もご検討下さい。
1.遺言が無効になってしまう、中途半端な財産の特定方法
最近、終活ブームという世相も相まって、自筆証書遺言の書き方を解説してるサイトも多くあります。
おそらく、『本文を自署で書いて~』などと、概ね民法の要件について書いてある記事です。
しかし、実務に即して、記載を避けるべき点や、注意点を取り上げているサイトはまだ多くはないかと存じます。
当然、民法の要件に満たしていない自筆証書遺言は無効となってしまうので、作成時に十分注意しなければなりません。
実際問題、遺言書を残したものの、それが無効であったため、却って相続発生時に、相続人間に無用な期待や落胆が与えられ、混乱をきたしてしまうことが、ままありま。
しかし、民法の要件はあくまでも最低限の条件です。
実務的な面で、さらに踏み込んで注意すべきことは、相続すべき対象財産について無効な表現方法をしないということです。
ここでは下記に特定方法が微妙なもの例示したので、自筆証書を書く場合は、これらの表現方法は絶対に避けてください。
1-1.【部分無効になる記入例】
(1)『自宅は長男○○に相続させる』
…自宅というのが不明確です。
仮に、当人たちは分かっても、法務局などの完全な第三者からしてみれば、客観的な判断が出来ない為に、このような遺言書を用いて相続登記をすることが出来ません。
どの不動産を相続させるかまでの特定が必要です。
(2)『大阪府枚方市本枚方町1丁目2番3号の土地と建物を長女◇◇へ相続させる。』
地番や家屋番号をご存知ない場、相続不動産を住所で記載してしまったがために不明確扱いになります。
実際に、同じ住所上の扱いの不動産は複数存在することは多々あります。
不動産の指定については、必ず、土地は地番で、建物は家屋番号で記載しましょう。
(3)『△△銀行の預金は長男と長女で仲良く分けなさい。』
…分ける割合を明記していない場合、結局は長男と長女同士で、割合分について遺産分割協議をしなくてはならないので、遺言書を残した意味がありません。
これだと、状況によっては、長男と長女の間に揉め事が起きてしまうこともありますので、分け方まで注意して記入しましょう。
これはあくまで、ごく一部の危険な記載例です。
もっと注意すべき書き方や避けるべき書き方は山のようにあります。(※他の記事に自筆証書遺言での失敗例をまとめてみます。)
公正証書遺言だと、作成時に公証人の先生が指摘して直してくれますが、自筆証書遺言の場合は自分だけで完結する為、間違った遺言書を完璧な遺言だと信じてそのままにしているケースも多く存在します。
せっかく作成する遺言書ですから、後々に相続トラブルを派生させない為にも、微妙な表現は避けて作成したいものです。
2.自筆証書遺言作成のポイント5点
前回からの記事の内容のおさらいを含めて、自筆証書遺言の作成について、5つのポイントをまとめてみました。
1.全文(財産目録を除く)を自筆で書く必要がある。
2.日付の記入と最後に署名捺印も忘れずにする。
3.いつでも作成しなおしができることが最大のメリット。
4.見つからない可能性があるので最低でも家族の誰かには存在を伝えておく。
5.死亡後に家裁の検認手続きが必要なのですぐに執行することができない。(※.1検認が不要になる、法務局の保管制度を利用する方法もある。※.2自筆証書遺言の保管制度とは?⇒)
3.被相続人の死後、自筆証書遺言を発見したら?
ここまでは、自筆証書遺言の作成に関する部分を説明してきましたが、ここからは亡くなった人が自筆証書で遺言を作成したことが分かった場合のお話です。
特に、封筒に入って封印がしてある自筆証書遺言が見つかった場合には、絶対に開封してはいけません。
これをもし、発見した人が、勝手に開封してしまうと5万円以下の過料の制裁が課される可能性があります。
それだけでなく、さらに変造や隠匿をしてしまった場合、欠格者として扱われ相続分を受け取れなくなることもあります。
もしに、封がしてある遺言書を発見した場合には、勝手に開封ししまうのではなく、すぐに家庭裁判所の検認手続きを行うようにしましょう。⇒参照:大阪家庭裁判所 遺言書検認について
4.できるだけ公正証書遺言もご検討下さい。
ここまで自筆証書遺言について詳しく解説をしてきましたが、相続実務を行う立場から率直な意見を言わせていただくと、自筆証書はそこまでお勧めできるものではありません。
何故ならば、死後、お持ちいただく自筆証書遺言を拝見する限り、大半に何らかの不備・問題があるからです。
実際に、不備のある遺言を作られてしまった場合、死後の相続手続きを処理する人に迷惑がかかります。
また、大変失礼な言い方になることは重々承知なのですが、自筆証書遺言に不備がある場合、最初から無い方が手続きがスムーズ終わるケースも多いです。
さらに言うと、事実に合致しない自筆証書遺言が残っていたことが原因で揉めてしまったケースも何度も見てきました。
自筆証書遺言と公正証書遺言の大きな差は、これまで説明してきた通り、作成時の“費用と手間”の2つです。
たしかに自筆証書の方が作成時に費用も手間もかかりませんが、後々の遺言の執行を行う段階で、大きなトラブルを抱える可能性が高いのは、自筆証書遺言の方だということも、お伝えしておきたいです。
その為に、もしこれから遺言を作成しようと考えているのなら、自筆証書ではなく公正証書での遺言作成も、何卒、ご検討下さい。
まとめ
今回は二回に分けて、自筆証書遺言を作成するにあたっての、基本的な部分について、説明させていただきました。
このように、相続・遺言を解決する当事務所では、様々な状況に合わせて、相続手続きや遺言書作成について、相続手続きサポートさせていただきます。
また、相続した不動産についてお困りなら当事務所まで是非ご相談ください。⇒不動産相続 相続登記お任せプラン
相続の開始から売却までのご相談にも対応いたしております。
なお、相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。