こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。
もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。
さて、成年後見という言葉について、昨今ではテレビや新聞などで見かけるようになり、我々の暮らしのなかでも、かなり身近な言葉になってきました。
後期高齢者さんを中心に、認知症などの知的障害の関係で、本人の判断能力が不十分になってきた場合の方は、自分で財産(不動産や預貯金など)を管理したり、契約行為(遺産分割や売買契約など)をすることが、非常に難しくなっていることが、あるかと思います。
例えば、もしも、本人の判断能力が十分ではない状態で、大きな買い物をする場合、悪徳商法の被害にあうケースも考えられます。
このような判断能力が不十分な方々の財産を守って支援するものが成年後見制度です。
ここでは、そんな成年後見制度について、詳しく説明してみます。
成年後見制度の基本情報
まず、前提として、法律上、成年後見制度には、大きく分けて「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つが存在します。
これ等の二つの違いについての説明は、本記事では割愛させていただきますが、まずは大きく上記の2つの制度があることだけを、知っておいてください。
次に、この法定後見制度ですが、ここから更に、“後見” “ 保佐 ” “ 補助 ” の3つの分かれていて、本人の認知症の深度や、判断能力の状況・程度に応じて、これらの制度を選択することができます。
そして、これら各制度の本人への適用について、親族らが家庭裁判所へ申立てをすると、成年後見人等 【成年後見人・保佐人・補助人 】 が選任されて、本人の財産を管理し支援していくことになります。
下記では、各制度の違いを表にしています。
後見 | 保佐 | 補助 | |
対象となる方 | 判断能力が欠けているのが通常の状態の方 | 判断能力が著しく不十分な方 | 判断能力が不十分な方 |
---|---|---|---|
申立人 | 本人,配偶者,四親等内の親族,検察官など | 同左 | 同左 |
成年後見人等の同意が必要な行為 | ー | 民法13条1項所定の行為 | 申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」 |
取消が可能な行為 | 日常生活に関する行為以外の行為 | 同上 | 同上 |
成年後見人等に与えられる代理権の範囲 | 財産に関するすべての法律行為 | 申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」 | 同左 |
資格の制限 | 医師,税理士等の資格や会社役員,公務員等の地位を失うなど | 医師,税理士等の資格や会社役員,公務員等の地位を失うなど | ー |
誰が成年後見人等に選ばれるのか
もっとも肝心になる部分として、本人に対する成年後見人等(後見人・保佐人・補助人)には、誰が就任するのか?についてですが。
結論から言って、本人の財産状況や事情等を考慮しながら、家庭裁判所が決定することになります。
この裁判所の決定次第によって、専門家だけではなく親族がなることも可能です。
そして、このの場合には、選任申立てをする際に、成年後見人等になる “成年後見人等の候補”として、申立て書に記載をすることが必要です。【※他にも相応の添付情報が必要になります。】
ただし、申立書に候補者として特定の人物を記載をした場合でも、あくまでも決定するのは家庭裁判所なので、必ず当該候補者が選ばれるわけではありません。
候補者については、あくまでも家庭裁判所の選任候補者の一人として考えられるだけにすぎませんので、家庭裁判所が本人のためと考えれば、親族を候補者として立てたとしても、第三者の専門職後見人が選ばれてしまう場合があります。
この場合の専門職には、司法書士・弁護士のような法律家や、社会福祉士が選ばれますが、中でも司法書士が一番多く成年後見人として選ばれるケースが多いようです。
参考:親族候補者以外が成年後見人に選ばれる基準
実際にも、成年後見制度の適用を希望されるの多く方が、親族を成年後見人にしたいと考えています。
理由としては、第三者の専門職後見人が選ばれてしまった場合には、毎月専門家への報酬(月2~5万円)が発生してしまい、本人の財産が減少してしまう可能性があるからです。【※当事者の年金や金融資産の過多に応じて、事例に応じて状況は異なります。】
そもそもの目的にもよるのですが、第三者が財産管理の中に入ってくるのを良くは思わない親族もいるでしょう。
よって、多くの方が親族を候補者にしているかと思いますが、前述したように、必ず親族が成年後見人に選ばれるわけではなく、期待に反して専門職が成年後見人になってしまう場合があります。
一度その専門職が付いてしまうと基本的に一生涯その後見人に報酬を払い続けることになってしまうので、これが嫌なら、なるべく避けたいところではあります。【※逆に、成年後見人制度の申立ての目的が、親族同士による本人財産の使込み防止にあるのであれば、専門職後見人を希望いただくことがベターです!】
しかし、実は、家庭裁判所としても、親族ではない専門職後見人を選任するにあたって、“ある程度の基準”を設けています。
その基準とは、流動性資産(預貯金等)が1200万円を超えるか否かです。(※東京であれば500万円)
この金額を超える場合は、親族以外の専門職後見人が選任される可能性を想定しつつ、成年後見の申立てを行う必要があります。
成年後見制度の目的、メリットとデメリット
成年後見制度を検討する場面として、下記のような状況が考えられます。
- 1.不動産を売却したい。
- 2.本人の生活環境を整えるための手続を適法に進めたい。
- 2.遺産分割をしたい。
- 4.定期預金を解約したい。
概ね、このような場合ではないでしょうか?
しかしながら、改めて提言しますが、成年後見制度は、あくまでも本人の財産を守るためのものです。
本人の周りの親族のための制度ではありません。
施設入所等のため介護保険契約が必要な場合。
さらに、身上監護として、本人の生活環境を整えるために法的な手続を行うことが必要な場合。(※たとえば、要介護認定の申請手続、住居の確保、病院への入院手続等が挙げられます。)
その目的が、定期預金を解約して本人の生活費や医療費に充てる。不動産を売却して本人を施設に入る資金にする。発生した相続の遺産分割を実施して本人に財産を承継させてあげる。このような本人のためになるのなら非常に有効な制度でしょう。
成年後見制度を利用した場合、仮に、要望通りに親族が成年後見人等に就任出来たとしても、その方が亡くなるまで財産を管理する必要が発生し(※当然、ご自身の家計と分けて、横領・不正や計上漏れが無いように管理する必要があります。)、同時に、毎年家庭裁判所への報告義務も発生します。
専門職後見人が選任されれば、上記の仕事を一任することも可能ですが、本人の財産から、残りの一生涯、その専門職への報酬が発生し続けます。
もし、成年後見制度を使うのなら、利用の意図と目的が合致しているのか?
本当に、本人の為に活用できるのか?
深く考えてみて、それでも制度を利用すべきだと思うのであれば、是非ご本人のために成年後見制度を使っていただけると良いと思います。
まとめ
このように、相続・遺言を解決する当事務所では、様々な状況に合わせて、相続手続きや成年後見申立て書類作成について、サポートさせていただきます。
今回の記事のような事例でお困りでしたら、なるべく早期にご相談ください。
一括して手続きをサポートさせていただきます。
なお、相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。