こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。
もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。
相続した不動産に農地がある場合、どのような対応方法が考えられるでしょうか?
被相続人が農地を所有していた場合、農家を引き継ぐ相続人がいればその人が農地を相続すべきですが、実際問題、大部分の相続のケースで、子供が誰も就農していない為に、誰も農地を相続したがらないケースが多いです。
今回の記事では、農地を相続した場合に着目をして説明を進めていきたいと思います。
農地の相続について。
先ず、大前提として可能であれば…、
農地の相続は、国を支える農業の後継ぎ問題としても関わっているので、できる限り家族全体の事として、生前から話し合いをしておくべき話です。
また、農地の場合、宅地と違い第三者へ売却することは簡単にできません。(※農地法の許可)そのため、今後どのように農地を利用・管理していうのか? 先の事もしっかりと決めておく必要があります。
もし、生前に話し合いをしないまま、農地所有者が死亡してしまった場合には、普通の不動産と同じく、まずは相続人同士で遺産分割を行い、その土地の相続人を決定していくことになります。
農地の相続手続き(登記と届出)
遺産分割協議が確定して、農地を誰が相続するかが決まれば、以下の2つの手続きに移行します。
- ①相続登記(⇒法務局へ)
- ②相続の届出(⇒農業委員会へ)
上記の様に、この2つの手続きは、いづれも申請先が異なりますので、注意が必用です。
以下、別に説明します。
①相続登記の申請(法務局)
まず、不動産の名義人は、被相続人のままになっています。
そのため、その名義人を相続人へと変更する必要があります。
ちなみにこのタイミングでは、農地法の許可等は不要です。(※相続は人為的に土地の所有者を変える取引行為ではないため。)
②相続の届出(農業委員会)
相続登記が完了したら、次は、その農地を管轄する農業委員会に対して届出を行います。
この届出は、相続開始を知ったときから「10ヶ月以内」に農業委員会に対して行う必要があります。※期限アリ
なお、10ヶ月の期間制限が設けられている理由は、農地の相続を長期間放置されてしまうと、誰の農地か分からなくなってしまうのを防止するためです。
このような管理者不明の農地を指して、“耕作放棄地”といいます。最近、この耕作放棄地が増えてきており、社会問題になりつつあります。
農地の相続税
農地も相続財産であることには変わりがないので、相続税課税対象に含めて計算をする必要があります。
宅地の場合には、路線価によって課税価格を計算するのが一般的なのですが、農地の場合、評価方法が難しく注意が必要です。
特に広大な農地である場合、又は、都市部やその近郊にある農地の場合は、非常に相続財産評価として高額になる場合が多いです。早めに税理士へ相談、評価をしてもらうべきです。
当事務所の場合、相続税に強い提携税理士事務所がございますので、農地評価についてもご相談いただけます。
相続農地を承継したくない場合
当事務所は、枚方を中心として対応している事務所ですから、案外、農地の相続手続きは多いです。
その他にも、隠れた地方不動産である農地を相続してしまった方の相談事例も多々あります。
両親はどうであれ、自分では相続農地を管理できない…。といった相談に来られる方は、一定数いらっしゃいます。
もしも、農地を管理できる相続人が誰もおらず、遺産分割協議が出来ず、その上で、農地相続するのを回避されたい場合には、以下の対応を検討する必要があります。
相続放棄
相続放棄をすれば面倒な届出から解放されます。
ただ、相続放棄の場合は、農地だけでなく他の相続財産の一切を放棄することになりますので注意が必用です。
それこそ、自宅不動産だけを相続して、農地だけ相続放棄をすることは不可能です。
もし相続放棄をするなら、他の相続財産と総合的に検討をしたうえで、それでも相続放棄をすべきだと判断できた場合にだけ、相続放棄をするべきです。
また、相続放棄にも期限があります。
相続放棄は“相続開始を知ったときから3ヶ月以内”にする必要がありますので、検討するにしても、早めにしていただく必要があります。
農地の転用(農地法第4条)を申請する。
あくまでも、農地転用の条件を満たしていることが大前提ですが、農地として利用しないのであれば、宅地や駐車場に転用して別の方法として利用してみるのは良いです。
もしも、農地から宅地等に地目変更することができれば、売却するのに農地法許可も不要になり、自分でアパートを建てて賃料収入を得ることもできます。
※ただし、明らかに周りが田んぼや畑だけの場所であったり、市街地から離れているような場所では、農地転用することができないことの方が多いです。
甲種農地や第1種農地、また農業振興地域内にある農地は原則として農地転用が認められません。
しかし、調査の結果、もしも、農地転用をすることができる土地なら、その土地の価値は一気に跳ね上がり、自由に処分等をすることも可能になります。
相続放棄はあくまでも最終手段なので、諦める前に、是非、一度相続した農地がどのような属性のものなのか?調査頂くことをお勧めいたします。
売却処分
農地を利用してくれる方がいれば、その人に売却する方法がお勧めです。
隣地の農地所有者さんが譲受を名乗り出てくれたり、近隣の方が、借用地として利用を希望される場合もあります。
実際に、農地の相続対策として、該当農地のご近所に打診を進めておくのは有効であると考えます。
※ただし、第三者への売却・贈与を希望する場合、後述する農地法許可が必要となります。
農地を売却(贈与)で移転する場合の農地法の許可とは?
な相続以外(売買や贈与など)の原因により、農地の名義を移転する場合には、農地法に基づく許可が必要となります。
農地法の制定根拠としては、新所有者が勝手に農業を辞めてしまい、仮に農地以外として利用されてしまうというケースが増えた場合…、国の食料自給率が下がってしまい、食料の安定供給に支障をきたしてしまう恐れがあるから…、というモノです。
ちなみに、厳密には、農地法上での“農地”とは、田や畑だけではなく、採草放牧地も含まれています。
そして、その農地法で、農地の“売買、賃借、転用”について定めているのが、農地法第3条、4条、5条になります。
以下で個別に条文および要件を紹介します。※提携先 行政書士監修済。
農地法第3条(農地につき、農地として耕作目的のために、売買、贈与、賃借をする場合など、権利の設定や移転をおこなう場合)
- 農地の権利設定や移転をおこなうためには、農業委員会の許可が必要。
- 「市町村内に住所がある者が市町村内の農地を取得する場合」には、申請者は農業委員会に申請書を提出し、その後、農業委員会から許可通知が出される。
- 「市町村外に住所がある者が市町村内の農地を取得する場合」には、申請者は農業委員会に申請書を提出し、その後、都道府県知事の許可を得て、農業委員会経由で許可通知が出される。
- 原則、農家でない者が農地を取得することはできない。また、取得者がその農地の全てを耕作すると認められること、必要な農作業に常時従事すると認められること、経営面積が原則50a以上であること、通作距離との関係からみて農地を効率的に利用し耕作すると認められることが要件となる。この許可を受けないで農地の売買などをおこなった場合には、その効力は生じない。(※つまり取引事態が無効)
農地法第4条
(所有者が自らのために農地を農地以外のものへ転用する場合)
- 農地の所有者自らが転用を行う場合(自己転用)に申請する。※農地から住宅に変更し、な建物を建築する場合。
- 「4ヘクタール以下の市街化調整区域」の農地を転用する場合には、都道府県知事の許可が必要。
- 「4ヘクタールを超える市街化調整区域」の農地を転用する場合には、国との協議を付した上で都道府県知事の許可が必要。
- 市街化区域内にある農地を転用する場合は届出で良い。(※許可ではない。)
農地法第5条
(所有者以外の者がその所有者から売買、賃借によって転用する場合)
- 4条と同じ農地の転用について申請する。自己転用の場合ではなく、農地の所有者から売買や賃借により権利を得た者が転用をする場合。
- 「4ヘクタール以下の市街化調整区域」の農地を転用する場合、都道府県知事の許可が必要。
- 「4ヘクタールを超える市街化調整区域」の農地を転用する場合、国との協議を付した上で都道府県知事の許可が必要。
- 市街化区域内にある農地を転用する場合には届出で良い。(※許可ではない)
農地法許可の例外(※許可が不要になるケース)
国、都道府県、指定市町村※が農地の転用をする場合⇒許可不要。
※指定市町村⇒農地転用許可制度を適正に運用し優良農地を確保する目標を立てるなどの要件を満たしているものとして、農林水産大臣が指定する市町村のこと。
また、学校や社会福祉施設、病院、庁舎などの公用物ため転用を置こうなう場合、許可権者と協議をおこなう必要があり、その協議が整った場合には許可を受けたものとみなされる。(第4条、第5条の協議)
参照:農業委員会について-農業委員会は、農地法に基づく売買・貸借の許可、農地転用案件への意見具申、遊休農地の調査・指導などを中心に農地に関する事務を執行する行政委員会として市町村に設置されています。
まとめ
農地の相続については、農家を継いで、そのまま家業として農地を使っていく相続人がいらっしゃれば何らの問題が生じませんが、利用予定のない農地をいきなり相続してしまうと、さすがに困ります。
これまでのように、相続登記を放置することはもう出来ませんし、届出義務履行の観点からも、行政に対しての責任問題もあります。
相続人が複数いる場合や、閉口して他の種類の相続財産の処理も進める場合、農地がボトルネックになり進まない場合もあるのですが、しっかりとお客様に寄り添いながら実務をこなしていきたいと考えています。
相続・遺言を解決する当事務所では、様々な状況に合わせて、相続手続きや成年後見申立て書類作成について、サポートさせていただきます。
今回の記事のような事例でお困りでしたら、なるべく早期にご相談ください。
一括して手続きをサポートさせていただきます。
なお、相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。