こんにちは!枚方の司法書士 尾花健介です。
もちろん枚方だけでなく、寝屋川市、香里園、樟葉、守口市、門真市、四条畷市、東大阪市など、枚方を中心とした関西全域に対応している司法書士として活動しております。
戸籍上の記載ある、法律上の配偶者は、通常、相続人となります。
では、内縁の配偶者であった場合はどうなるのでしょうか?
内縁ということで、戸籍には反映させず、法律上の婚姻関係は成立していなくとも、事実としては互いに同居をしており、長年、共に生活して、一緒に過ごしていたとすれば…、内縁の配偶者の方にも相続分を与えても良いのでは?という考え方もできます。
今回の記事では、内縁の配偶者と、その相続権について詳しくまとめていきたいと思います。
そもそも内縁配偶者とは何か?
冒頭の通り、戸籍法上の婚姻関係にない夫婦のことを意味します。
最近では、事実婚と呼ばれることの方が多いかもしれません。(居住実態が同じで、“事実上、婚姻関係にある”という意味にて。)
近年、多様性社会と言われ、夫婦関係の在り方にも様々な形態が存在すると言われておりますが、この場合、婚姻届を提出しないまま、内縁関係(事実婚)を続けるご夫婦の方もいらっしゃいます。
また、何らかのご事情にて、ご親族の方への配慮が必要で、婚姻届を提出しないまま、結果的に内縁状態での生活が長期間渡って続いているという方もいらっしゃいます。
この点、冒頭でも記載した通り、このような内縁状態の配偶者関係に於いては、相続に際して、何点か、通常の相続と異なる点が発生することに、注意しなければいけないことが在ります。
被相続人(亡くなられた方)と内縁配偶者と相続の関係
通常、戸籍上の配偶者はお互いに、常に、亡くなった側の配偶者の相続人となります(民法890条)。
まず、この法律上に於いての、配偶者の定義とは何か?
この点、若干整理します。
婚姻関係とは、戸籍法の定めるところにより効力を生じますので、婚姻届の提出により効力を生じます(民法730条1項)。
※婚姻届の提出に際して、互いの戸籍を添付し、新本籍・新戸主記載の、新しい戸籍謄本が作出されます。
つまり、何年一緒に生活を共にして暮らしていようとも、婚姻届の提出が無ければ、内縁の配偶者とは法律上の婚姻関係にありませんので、内縁の配偶者は相続人となることはできません。
これは、他の家族、親族、あるいは近隣の住民の方が、その事実(内縁関係、事実婚の状態)を客観的に確認していたとしても、同じです。
因みに、その逆で、離婚を検討していて、まだ、離婚届を提出する前の状態の方や、裁判上、離婚調停中であったり離婚訴訟中のご夫婦であったとしても、まだ、正式に離婚が成立していない場合であれば、その時点までは、互いに姻関係(法律上の夫婦)にあることに変わりありませんので、その状態でも、夫婦のどちらかの方が亡くなった場合には、配偶者として相続人となります。
特別縁故者としての財産分与請求(民法第958条の3)
それでは、婚姻関係にないからといって、内縁の配偶者が全く、相続に関与することが出来ないのか?
何らかの形で、被相続人の財産が取得される機会は無いのでしょうか?
この場合、特別縁故者としての財産分与請求する方法が考えられます。
まず、前提として、亡くなられた内縁配偶者に対して、誰も相続人が居ない場合に、(子供、親、祖父母、兄弟姉妹、甥姪)に、被相続人と特別の縁故があった者(具体的には:①被相続人と生計を同じくしていた者、②被相続人の療養看護を努めていた者)がいればその者へ相続財産の全部、又は一部を与えられる場合があります。※家庭裁判所が決定します。
ただし―、
この、特別縁故者としての財産分与請求の制度を使うならば、上記の通り、“相続人が誰もいない場合”という、極めて大きな条件が前提となってきますので、この規定は、なかなか使いづらいです。
なので、あくまでも最終手段として考え、内縁配偶者の方は、相手の方へ財産を残すことを希望されるなら、遺言書等の方法にて、財産を渡す方法をお勧めいたします。
遺言書を作成して財産を残す方法(遺贈)
上記の通り、内縁配偶者の方から、家庭裁判所に申述して、特別縁故者として財産請求をする…、という方法も無いことは無いですが、実際に、これを利用するというのはあまり現実的ではありません。
もしも、ご自身が互いに内縁の夫婦である、配偶者に対して、確実に財産を残しておきたいと考えるのであれば、お互いに遺言書(公正証書遺言)を活用して遺贈する方法お勧めいたします。
遺言書を活用する場合は遺留分に注意
因みに、「内縁の配偶者である○○○○に、全てを財産を遺贈をする。」といった遺言書を残すでも良いのですが、この場合の遺言書内容になると、法定相続人には遺留分がありますので、法定相続人側の姿勢によっては、相続争いとなってしまう可能性があります。
遺留分を請求する法定相続人の人数や、遺産の種類や構成内容にも拠るのですが…、もしも、法定相続人との争いが発生してしまうと、せっかくの遺言書を作った目的や、気持ちも台無しになってしまいます。
内縁配偶者の方への、遺言書の作成に際しては、死後に内縁の配偶者と相続人が揉めないよう遺留分の発生可能性を検討しながら、遺言書を作成するようにしてください。
この点、もしも、どのような内容にするべきか、分かりにくいのであれば、積極的に専門家を利用した上で、遺言書作成を進めた方がいいでしょう。
当事務所であれば遺言書作成の相談も随時受け付けておりますので、お困りのことがありましたらお気軽にお問い合わせください。
まとめ
内縁の夫婦関係は、法律上の婚姻関係がある夫婦に比べて、どうしても遺産相続の際に問題が出てきてしまいます。
各御家庭のご事情や、そもそも近年では夫婦関係の在り方自体が多様化しておりますので、内縁関係自体が悪いことは何もありません。
しかし、法律上の相続権がない事で、どちらか一方が死亡した場合に残された内縁配偶者の方の生活基盤が損なわれてしまう可能性が在ります。
ご夫婦関係に於きまして、もしも、内縁関係を選択するのであれば、どちらかが亡くなったとしてもお互いが困ることがないよう、生前、意思が明確な時点から、遺言書作成にて、対策を残しておくことをお勧めします。
相続・遺言を解決する当事務所では、様々な状況に合わせて、相続手続きや成年後見申立て書類作成について、サポートさせていただきます。
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なお、相続や遺言のことをもっと詳しく知りたいという方は、下記の“総まとめページ”の用意もありますので、是非ご参考になさって下さい。